記録を見てみると、このルートを初めて触ったのは今年の2/28。
ゴジラパワーのトライを始め、合間にトップロープでやった。
その時のこしたコメントには、
全部が核心、とにかくずっとツライ。
いつか地獄がどんな所か見たくなったらリードしてみよう。
そう記してある。
再びこのルートを触ったのは11月の中頃。
雨は止んだものの岩が乾く様子が無く、トップロープを張れるルートでトレーニングしようとモスラパワーを選んだ。
そして意外にもあっさりノーテンで抜ける事ができたのだ。
気づかぬ内に9ヶ月間でこのルートに挑戦出来るだけの力が付いていた。
自分でも驚きだった。

モスラパワーのグレードは5.11cである。
私の限界グレードだ。
と言っても今までRPした事のある5.11cは3つあるが、どれもが花崗岩のワイドクラックだった。
これがRPできればワイドではない初めての5.11cとなる。
私はクライミングに対していつも劣等感をもっていた。
別に人と競うものでもないし、勝ち負けを争うものでもないのだが
それでも、クライミングジムにおいては同じ頃に始めた人達は比べものにならない程つよくなっているし、
岩場においても周りのクライマーはみんな上手で、共感できるのはワイドクラックぐらいだった。
ワイドしか人並みに登れないという劣等感。
そして自分のベストグレードがホームゲレンデで出せていないという劣等感。
モスラパワーは生粋のシンハンドだ。
このルートのRPが現実のものになり得ると感じた瞬間。
モスラパワーは私にとって特別なルートとなった。
12月に入りトライ開始した。
ゴジラパワーとルートを共通する下部は、核心で行ったり来たりしたけどギリギリ感満開で突破。
上部は残り5mまで自信満々。しかし最後の3mでカムを掴むという、なんとも形容しがたいショボさ。
37m頑張ったんやから最後の3mくらい粘れよ!って感じです。
カムを掴むより攻めて落ちたかった。
もっというと最後のプロテクションは取らずに行けたら男だったんだけど、、、。
とにかくロープの重さが堪えた、トップロープとはえらい違いだ。
翌週、、、。
2015年最後の名張と決めて挑んだモスラ。
2回トライして2回とも数十センチが届かなかった。
39m頑張ってきて最後の1手か2手がどうして頑張れない。
身体能力はRP出来るだけの力はあると思うのだが、気持ちが足りていないのだ。
この日は暖かく陽気な1日で周りはRPの量産。
ガンバ、ガンバの声援がそこら中で響いてました。
私一人が出し切れていなかった。
最後のリップを掴むまであと数十センチだった。
思い切り手を伸ばせば一手で届く距離だ。
ロープは35m以上出てて、2,3m程のランナウトでもロープが伸びて10m程フォールする。
目の前を幾つかカムが通り過ぎる。落ちながら景色が記憶に残るくらいの滞空時間だ。
二度目のフォールはロープが足に絡み、頭が下になって落ちてしまった。
考えるだけで胃がキリキリする。
・・・・ふと気づいたらそんなことを考えながら顔はニヤついていた。
いつからこんなふうになった?
ただ登れるルートを登るだけでは、楽しいと思わなくなっている。
いつからか登る事を楽しむのではなく、挑戦する事を楽しむ様になっているのだと気づいた。
その夜からずっとモスラパワーが頭から離れずにいる。
こんなふうに思うのはいつ以来だろう。
冬のゴジラパワー、春の清盛クラック、そして夏のMrスランプ、秋のジェードルクラック。
季節ごとに素晴らしい課題に出会うことができた。
そしてまた、新しい季節が訪れた。
散々妄想登攀して出した秘策は、全身全霊出し切ったジャムで止める!!
小細工は無しだ、気持ちでRPする。
そんな事を考えながら眠った夜。
モスラパワーを登っていたら、クラックからサニーレタスが生えていた。
幾つか収穫しながら背中のカゴに放り込み、小さな終了点のテラスに建ってた大きな小屋で美味しく頂く。
という夢を見た・・・・。
翌週、熊野に行く予定をやめて名張に来ていた。
当然、年内にモスラをRPする為だ。
何もかも決心できた時というのは、あっさりとしたもんだ。
同時にクライミングのパフォーマンスが如何に精神力と比例しているか痛感する。
自分でもあっけないと思う程、簡単にRPできてしまった。
モスラパワーにトライしたこの1か月は、充実していた。
そしてこのルートには様々なものを教えてもらった。
クライミングよりも挑戦する事に喜びを見出している自分の本質。
クライングのパフォーマンスを大きく左右する精神力。
少しだけ自分が強くなれたと思えた。